新建築社のブログ

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Archi future 2017に行ってきました

随分と日が経ってしまいましたが,先月10月27日に,建築分野におけるコンピューテーション活用の最新のソリューションが紹介されるイベント「Archi future 2017」に参加し,レクチャーなどを拝聴しました.

中でも印象深かった,暦本純一氏による「空間の拡張・人間の拡張」の内容について簡単にレポートします.

www.archifuture.jp

 

 

空間の拡張・人間の拡張

暦本氏はまずマーシャル・マクルーハンの言葉を引き合いに出し,テクノロジーはあらゆるものを拡張するものだと語り,ふたつの拡張「空間の拡張」と「人間の拡張」についてレクチャー.

空間の拡張

Squama

Squama: A programmable window and wall for future physical architectures (UBICOMP 2012 video) from rkmtlab on Vimeo.

 

まず紹介されたのはプログラム制御によって透明度を変化させる窓「Squama」.

Kinetic Facades

暦本氏はジャン・ヌーヴェル氏の「アラブ世界研究所」などの建築に触れつつ

madoken.jp

可変する外観を持った建築(「Kinetic Facades」)の存在に言及します.これまでの「Kinetic Facades」ではあくまで意匠的な問題としか扱われていなかったが,「Squama」のように精密に制御できるようになることにより,「Kinetic Facades」を機能として扱うことの可能性について話しました.

 

例えば,通気性.

使用者の身体状態に合わせて形状を変化させ,通気性をコントロールするスポーツウェアを引き合いに出しつつ,

www.gizmodo.jp

環境に自動適応するような建築の可能性について.

 

またはプライバシーなど.

人の動きをトラッキングすることで人の動作に合わせて,窓の一部分のみを不透明化する技術や窓を通して見える景色をマスキングする技術など,開口部に求められる,開いてはいたいけどプライバシーを守りたいという矛盾した欲求をコンピューターの精緻な制御で実現する技術を紹介しました.

 

また,部分的に影を発生させる「Programmable Shadow」は,直射日光を必要としつつもその分上昇した温度を冷房によって調節していることにより非効率なエネルギーの運用状態になってしまっている温室などへの活用可能性について語りました.

 

Mediated Reality(調停現実)

VRのようにもうひとつの現実をつくるわけでもなく,ARのように現実の上にさらに重ね合せるものでもない情報を足したりすることで人間にとって自然に思えるような現実を実現する技術を暦本氏は「調停現実」と名付けます.

こうした技術の本質はマーク・ワイザーの「Calm Technology(コンピューターなどの技術が日常に編み込まれ,意識せずともサポートしてくれるようなもの)」のように普段は見えないけれど私たちの生活を支えてくれるもの,はたまた梅棹忠夫氏が述べるように生活の「秩序と静けさ」を生み出すことであり,そのようにテクノロジーは発展していくものだと暦本氏は語りました.

 

人間の拡張

次は「人間の拡張」について.

まず暦本氏は石ノ森章太郎氏の『サイボーグ009』を引き合いに出しながら「HA(Human Augmentation)=人間拡張」について話しました.

暦本氏が提唱する「HA(Human Augmentation)=人間拡張」,「AH(Augmented Human)=拡張人間」は技術により能力を強化・増幅させた人間のこと.実際の試行を紹介しながら,そうした未来の可能性について語りました.

 

■Flying Head 

ヘッドマウントディスプレイを装着し,ドローンの視線をハックするもの.

 

■Jack-In

lab.rekimoto.org

「Jack-In」はウィリアム・ギブスンSF小説ニューロマンサー』をオマージュし名付けられたもの.ある人間を他のものや他の人間に接続することで,体験の共有などをするもの.

 

JackIn Space from rkmtlab on Vimeo.

LiveSphere: Immersive Experience Transmission by Wearable Omnidirectional Camera with Motion Decoupling from rkmtlab on Vimeo.

 

こうした技術はスポーツ観戦などの体験をさらにエキサイティングするだけではなく,自分を客観視する視点を持足せることでスポーツトレーニングにも適用できるとのこと.

こうした認知の拡張によって,人間がさらに自身の可能性を引き上げることに繋がるというのは非常に興味深いものでした.

 

 

(暦本氏×豊田氏の対談も興味深いものでしたが,まとめて書くことできませんでした...) 

 

感想

技術の進化により,より高精度に機械などを制御できるようになってきていて,さらにそれらが安価・簡易になり,技術の民主化が次第に進んできています.

その状況が整ってきているからこそ,暦本氏が,「Squama」のような可変性のある建築の可能性,そして拡張人間を目指してトライアンドエラーを繰り返していることに感銘を受けました.

建築の分野とは違う形で身体性(認知)にアプローチする「人間拡張」の試みは今後,建築の分野でも大いに参照される知見を積み重ねていくのだな,という風に感じました.

 

執筆者:fkd